こんにちは、ふみーずステディです。
東京都江戸川区にて現役在宅ケアマネージャーとして単独居宅支援事業にて勤務しております。
今回は意外と知られていない『訪問診療』について記事にしたいと思います。
高齢になると医療機関のお世話になる機会が増えてきます。
若いときに体調を崩すことは、ほとんどありませんし、身体に異変が起きても、少し休めばすぐに治ってしまいます。
しかしながら年を重ねるにつれて、身体機能が衰えてしまい、体調を崩してしまうことが増えてきて、身体のあちこちが痛くなってくる。
早く治したいので、お医者さんに相談するために、まずはクリニックに行って治療してもらおうということになります。
通院に行けるうちは通院に行った方がよいのですが、身体が衰えてくるにつれて、「物理的に通院が困難になった場合はどうすればよろしいのでしょうか?」
そのような状況になってしまったら『訪問診療』を利用します。
突発的な診察というよりも持病をお持ちで、定期的な健康チェック、治療が必要な方に適した診療方法です。
1. 『訪問診療』と『往診』
訪問診療とは
訪問診療とは自宅へ医師が定期的に訪問して診療してくれることです。
通院が可能であれば、具合が悪いときや持病がある場合は、定期的な治療のためにクリニックや病院へ通院します。
しかしながら、歩行が出来なくなってしまった、寝たきりで自宅から出られなくなった、といった理由で通院が困難になってしまったら『訪問診療』の利用に切り替えることができます。
訪問診療に依頼をすると原則的には、月に2回の訪問診療を行います。
例えば第1水曜日と第3水曜日の月に2回、毎月定期的に医師が患者宅に訪問して診療してくれます。
全身状態の確認や認知症、床ずれなどの対応もしてくれます。
お薬が必要であれば処方箋も出してくれますし、点滴や血液検査なども可能です。
クリニックで対応できる内容は概ね診療可能と思われます。
往診
よく『訪問診療』と間違って表現されるのが『往診』です。
『訪問診療』は定期的な診療を指しますが、『往診』とは緊急時に訪問して診療してくれることです。
例えば急に具合が悪くなって、診療してほしいけれども通院にはいけないので医師に家に来て診察してもらいたいというときです。
そういった緊急の際も普段から訪問診療で定期的に診療していれば、普段の状況と比べることができるので、適切な診断に繋がる可能性が高くなります。
2. 訪問診療を利用するには
担当ケアマネージャーに依頼する
通院に行けない患者さんの場合、すでに要介護状態で在宅介護サービスを利用していることが想定されます。
介護認定を受けていない方はまず認定申請を申し込みましょう。
介護認定を申請するには地域包括支援センターや区役所(市役所)に相談するのが一般的です。
江戸川区の地域包括支援センターのリンクですが、他自治体も同様に地域包括支援センターが存在するので地域の区役所(市役所)に問い合わせてみましょう。
すでに在宅介護サービスを利用されていて担当のケアマネージャーがいればケアマネージャーに訪問診療の依頼をしてください。
ケアマネージャーは地域の訪問診療所の情報を持っていますので適切な診療所を紹介をしてくれるでしょう。
9割以上のケースはケアマネージャー経由で依頼されると思われます。
直接診療所に依頼する
まれなケースですが、担当ケアマネージャーがいない場合は、直接医療機関に連絡して依頼することも出来ます。
ただし直接連絡するといってもどこのクリニックが訪問診療の対応をしているか、訪問診療専門でやっているところはどこかなど自力で情報収集するにはハードルが高いと思います。
まずは近隣の『地域包括支援センター』に相談することが得策ではないでしょうか。
3. 利用料金は?
年齢や所得額によって自己負担額が異なります。
後期高齢者(75歳以上)で370万円未満/年の収入の患者さんの場合は、医療費の1割負担で治療が可能です。
その場合、疾患にもよりますが、月に2回の診療で7,000円~8,000円/月程度の自己負担額になります。*介護保険の居宅療養管理指導含む。
医療負担額の詳細は厚生労働省のwebサイトを参考にしてください。
血液検査などを行った場合は別途追加料金がかかります。また、薬は別料金となります。
4. 薬について
処方された薬に関しては、近隣の薬局へご家族などがとりに行くことが一般的です。
ご家族が対応できず、薬局にいけないという場合は、訪問薬局の利用も可能です。
薬剤師が薬を届けてくれる上に、服薬の状況確認や残薬などのチェックをしてくれます。
独居でご家族も近隣にいないなどの患者さんには有益なサービスではないでしょうか。
5. 訪問診療のメリット
通院する必要がない
通院する必要がなく移動がないことは大きなメリットです。院内の待ち時間もないので身体的精神的負担が共に軽減されます。
注)通院が出来る方は利用できないので注意です。
医師とコミュニケーションが取りやすい
クリニックや病院の診察時間は非常に短く簡潔な印象ではないでしょうか?
時間にするとものの3分くらいで終わってしまうことが多いと思います。
それに比べて訪問診療の医師は滞在時間が比較的長めです。
その分コミュニケーション時間が長くなりますので詳しく説明を受けることができます。
病気のことや原因などの理解度が深まった上で治療してもらえます。
気軽に質問ができるのでよくわからないまま治療を受けるということも少なくなるのではないでしょうか。
その結果、医師と患者、ご家族の関係性が深まり、安心感が醸成され、満足度は高まります。
緊急時は往診してくれる
突発的に具合が悪いときなど往診してくれるので安心です。
往診医がいればイキナリ救急車を呼ぶなどせずに、まずは往診医の判断を仰ぐことが出来ますし、その場で診断できる病状でしたら大事に至らずに治療できます。
電話連絡が可能なので電話越しで症状を伝えて指示をもらったり、対応方法を教えてもらうこともできます。
このように患者の状態に伴って柔軟な対処が出来ます。
いつでも連絡が取れやすいので安心感もありますし、スピーディーな対応が可能となります。
在宅での生活状況を把握している上で診療してくれる
訪問医師は生活の場を目の当たりにしますので在宅環境を把握しています。
より本人や家族のことを理解した上で診療してくれるので、適切な診断につながるし、心理的な理解も示してくれます。
通院の場合は医師とのコミュニケーション時間が少なく、在宅状況もわからないので訪問診療ほど患者に寄り添えないことはしかたがないのではないでしょう。
認知症患者の診療が得意
前述しましたが訪問診療は在宅での環境を把握しています。
認知症患者は日常生活の中に症状の結果が随所に現れます。
認知症に気づく機会が多いので、認知症患者と早い段階で接触することになります。
そのような環境もあり認知症患者に強い医師も多いです。
認知症の疑いで通院に行く患者が少ないので訪問診療をきっかけに認知症が発見できるケースも少なくありません。
認知症は早期発見、早期治療が症状進行を予防するには有効です。
普段の行動習慣や生活環境を見ているので適切なタイミングやアプローチ方法で認知症に対処できます。
他の疾患で訪問診療していても、認知症状が出現した際に早めに気づけることが期待できます。
無愛想な医師が少ない
訪問診療専門の医療機関はコミュニケーションも上手な医師が多いので無愛想な医師は少ないです。
クリニックや病院の医師が皆無愛想かというと決してそうではないのですが、多数の患者を次々診断していかないといけない環境なので無意識に無表情で応対してしまうこともあると思います。
メディカルソーシャルワーカー(MSW)
訪問診療専門の医療機関にはメディカルソーシャルワーカー(MSW)という医療の相談員が配属されている場合があります。
MSWが仲介してくれる環境だとより頻繁にコミュニケーションが取れるのでケアマネージャーにとってもより連携がしやすい環境となります。
専門職であり、営業職的な側面を持つ立場なので心理的なフォローも巧みな方が多いです。
さらに情報や課題の共有しやすい、要望を伝えやすい、医療知識を得やすい等の副次的なメリットもあるのでMSWがいないよりはいる診療所がベターです。
6. 訪問診療のデメリット
訪問診療はメリットが大きいですが、デメリットと思われることも提起しておきます。
デメリットに関しては箇条書きにてポイントをお伝えしたいと思います。
- 7,000円~8,000円程度の負担/毎月がある。薬代は含まず。
- 持病を持っていないと費用対効果が悪いと感じるかも。
- 総合診療なので広く浅くのイメージ。専門的な疾患は病院へ通院が必要な場合あり。
- 設備が必要な検査などできないことがある。
- 通院が出来る患者は原則利用できない。
7. 今日のまとめ
費用的なことがクリアできれば、訪問診療のメリットは大きいと考えます。
通院に行くよりもストレスが軽減できるのでおすすめです。
しかしながら通院に行けるようであれば自立支援の観点からも通院は続けたほうがよろしいかもしれません。
今日はこれまで。
引き続きよろしくどーぞ!
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