
こんにちは、現役ケアマネジャーのふみーずです。東京都内の居宅介護支援事業所で、在宅生活を送る方とご家族を支援しています。
「親に終活の話をしたいけれど、縁起でもないと思われそう」
「相続の話をしたら、お金目当てだと思われないか心配」
「何から聞けばいいのか分からない」
介護の相談を受けていると、こうした迷いを抱えたまま、話し合いを先送りしているご家族によく出会います。この記事では、現場のケアマネとして見てきたことをもとに、親と終活の話をどう始めるか、何を聞いておくとよいかをまとめます。
ご注意:この記事は一般的な情報です。遺言、相続、税金、財産管理に関する個別の判断は、弁護士、司法書士、税理士などの専門家にご確認ください。
終活の話、実は多くの家族が「していない」

介護が始まってから、「本人がどうしたかったのか分からない」と悩むご家族は少なくありません。入院や施設入居、延命治療の判断など、家族が決めなければならない場面は突然やってきます。
話しにくい内容なので、事前に話をしていないご家族が多いのが現場の実感です。元気なうちに少しでも話しておくと、いざというときに本人の気持ちを手がかりに判断できます。
なぜ切り出しにくいのか:「相続目当て」に聞こえると関係に違和感が残る

終活の話でいちばん気をつけたいのは、切り出し方です。いきなり財産や相続の話から入ると、親は「お金のことを心配しているのか」「早く死ぬと思われているのか」と受け取ってしまうことがあります。
相続が目的だと思われると、その後の親子の関係に違和感が残る可能性があります。一度そう受け取られると、次に話を持ち出しにくくなります。
お金の話が大切なのは確かですが、順番を変えるだけで、話し合いの空気は大きく変わります。
入口は「お金」ではなく「本人の希望」

終活の話は、本人がどのような最期を迎えたいかを考える機会を、前もってつくることから始めるのがおすすめです。
厚生労働省は、もしものときに望む医療やケアを前もって考え、家族や医療・ケアのチームと繰り返し話し合い、共有しておく取り組みを「人生会議(ACP:アドバンス・ケア・プランニング)」と呼んで勧めています(出典:厚生労働省「人生会議(ACP)について」)。一度で決めるものではなく、気持ちの変化に合わせて何度も話し合ってよいものです。
たとえば、次のような問いかけなら、お金の話より答えやすくなります。
- 体が弱ってきたら、家で過ごしたい?それとも施設のほうが安心?
- もし入院することになったら、誰に連絡してほしい?
- これだけは続けたい、という楽しみや習慣はある?
自宅で最期まで過ごしたいという希望がある場合は、医師が自宅に来てくれる訪問診療の仕組みを知っておくと、選択肢が具体的になります。在宅介護を続けるか施設を考えるかの目安は、在宅介護の限界サイン|施設を考えるタイミングでも整理しています。
日頃の会話に自然に入れるきっかけ

終活の話は、改まって「話があるから座って」と始めると、親も構えてしまいます。常日頃から、自然に会話の中に入れていくことが大切です。きっかけになりやすいのは、たとえば次のような場面です。
- テレビや新聞で、介護や終活の話題が出たとき
- 知人や親戚の入院・介護・葬儀の話を聞いたとき
- 通院の付き添いや、介護保険の申請・更新のとき
- 誕生日や年末年始など、家族が集まるとき
「自分もそろそろ考えておこうと思って」と、子どもの側が自分のこととして話すのも一つの方法です。
話すきっかけとして、エンディングノートを使う家族もいます。親に渡すより先に、子どもが自分用に書いてみせると「書いてみようかな」と興味を持ってもらいやすくなります。書く項目が決まっているので、何を話せばよいか迷ったときの手がかりにもなります。
聞いておきたいこと

一度に全部を聞く必要はありません。話の流れの中で、少しずつ確認していきましょう。
・医療や介護についての希望(延命治療をどう考えるか など)
・もしものときに連絡してほしい人
・お金や通帳の管理を、誰に任せたいか
・大切にしている物や、伝えておきたいこと
聞いた内容は、日付を入れてメモしておくと、後で家族の間で共有しやすくなります。気持ちは変わるものなので、「前はこう言っていたよね」と確認し直すことも大切です。
話せたあとに:お金と相続の備えは専門家へ

本人の希望を聞けたら、次はそれを実現するための準備です。お金の管理や相続、遺言、身元保証などは、法律や税金が関わるため、専門家に相談しながら進めるのが安心です。
認知症になると、本人名義の預金の手続きが難しくなることがあります。元気なうちにできる財産管理の備え(成年後見制度・家族信託など)は、認知症で親の預金が動かせない?資産管理の備えと成年後見・家族信託で詳しく解説しています。
終活や相続について、まとめて相談できる窓口を使う方法もあります。
終活・相続の相談窓口の一例
弁護士法人のグループ会社が運営する相談窓口で、終活や相続の相談、専門家への紹介を受けられます。申し込みの対象は東京都・千葉県・埼玉県・神奈川県にお住まいの方です。サービス内容や費用は公式サイトでご確認ください。
それ以外の地域の方は、お住まいの市区町村の窓口や地域包括支援センター、弁護士会・司法書士会の相談窓口なども利用できます。
ケアマネに相談できること
介護保険のサービスを使っている方なら、担当のケアマネジャーにも相談できます。ケアマネは、本人の体の状態や生活の様子を知ったうえで、医療や介護の希望を関係者と共有する手伝いができます。
「本人が家で過ごしたいと言っている」「延命治療について家族の考えがまとまらない」といったことも、遠慮なく伝えてください。ケアマネの役割や相談できる範囲は、ケアマネジャーとは|役割・費用・選び方にまとめています。
よくある質問
Q1. 親が「縁起でもない」と嫌がったら?
A. 無理に続けず、その日は引きましょう。時間をおいて、ニュースや知人の話などのきっかけで少しずつ触れていくほうが、話しやすくなることがあります。
Q2. きょうだいで考えが違う場合は?
A. まず本人の希望を、きょうだい全員で同じように聞くことが大切です。一人だけが聞いた話だと、ほかのきょうだいが納得しにくくなります。聞いた内容はメモにして共有しましょう。
Q3. エンディングノートに書けば、遺言の代わりになる?
A. 一般に、エンディングノートは遺言書のような法的な効力を持ちません。財産の分け方などを法的に残したい場合は、遺言書について弁護士や司法書士に相談してください。
Q4. 親がすでに物忘れが増えてきている場合は?
A. 本人が話せるうちに、希望を聞いておくことがより大切になります。お金の管理の備えについては、認知症で親の預金が動かせない?もあわせてご覧ください。
まとめ
- 終活の話を事前にしていない家族は少なくない
- お金や相続から入ると、関係に違和感が残ることがある
- 入口は「本人がどう過ごしたいか」という希望から
- 改まった場より、日頃の会話で少しずつ
- お金と相続の備えは、希望を聞けたあとに専門家と
最後までお読みいただきありがとうございました。
終活の話は、一度で終わらせる必要はありません。ただ、本人が自分の言葉で希望を話せるうちに、少しずつでも話し始めることを、現場のケアマネとしておすすめします。
現役ケアマネとして、皆さまのお役に立てる情報を引き続き発信していきます。不安や疑問があれば、お住まいの地域の地域包括支援センターや担当ケアマネにご相談ください。
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